プロローグ






 痛い。

 痛い。いたい。


「許されぬ」


 痛い。


 何度も何度も殴られて切り裂かれて、動けなくても動き続けた。
 走れなくても走った。
 歩けなくとも歩いた。

 倒れることは知らなかった。


「許されぬ」

 祈ることも願うことも、望むことも知らなかった。

 いま。誰もいない荒野をふらつきながらも歩いている。

 


 ひとり。


 ああ、でもこれでようやく自由になれる。

「許されぬ」



 そうなれば、空だって飛べる。

 どこへだっていける。


 あの空のむこうがわにいくんだ。



「許されぬ」

「決して」

「倒れるな」

「決して」

「滅びるな」

「決して」

「逃げるな」



 そのある日、ひとりの少年の存在が抹消された。

 そのある日、ひとりの少年のイノチが生まれた。


 そして、始まった。









It's white. However, it's dark. (それは白い。しかしそれは闇。)


 まっしろな闇












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